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寺音さんのお宅の一周年記念に! と思いまして……一周年的な要素0だけれども;;
というか、
『何かリクエストありましたらどうぞ!』
というリクエストを寺音さんにした結果、まさかの二次創作のお許しを頂きました♪
寺音さん、一周年おめでとうございます!!
なんか、口上が長い……。
追記からどうぞ!
寺音さん宅の短編『五七五男』の設定および人物をお借りしました。
でも上手く借りれてる気がしないです。二次創作は難しいですね^^;
『それでも良いや、読んでやらぁ』
という寛大な方はどうぞ。
お持ち帰りは寺音さんのみ可です。
■■■本文開始■■■
『3割より御手洗(みたらし)』
松次郎は途方に暮れた。
松次郎は小間物屋の丁稚で、春には十八になる。とびきり優秀というわけではないが与えられた仕事を真面目にこなすので、主人からは信頼されている。そんな松次郎、今危機の真っただ中であった。
(困ったなぁ、困ったなぁ)
右を見ても左を見ても、人、人、人。人はたくさんいるけれど、誰も彼も松次郎のことなんか見向きもせず流れていく。
そもそも松次郎の困りごとは、うかつに人に言えるようなものではない。
ことの始まりは一時ほど前。松次郎は主人の徳兵衛に頼まれ、両替屋に行くことになった。大店や大名が使う本両替ではなく、もっぱら庶民を相手にする銭両替だ。徳兵衛に渡されたのは1両。初めて本物を見た。……と、そこまでは良いのだかその後が最悪だった。
その一両を掏られてしまったのだ。往来を歩いていて、どっと一度だけ人とぶつかった、その時に。
(困ったなぁ、困ったなぁ)
一両なんて大金を失くしてしまった。
(ああ、俺の人生は終わりだぁ。 奉公先を追い出されて、のたれ死んじまわぁ)
悔し涙がにじみ出る。
「真ん中に ぼさっと立ってる 邪魔な奴」
おかしな声がした。顔を上げると目の前に男が立っている。
(何だぁ、こいつぁ)
若い男だった。松次郎よりも少し年上くらいか。髪はぼさぼさで着物も着崩しているというのに、全体として澄んだ印象を受けるから不思議だ。男は眠たげな目でじっと松次郎を見据えている。
「な、なんでしょうか」
おっかなびっくり聞くと、男はむっとした。
「真ん中に ぼさっと立ってる 邪魔な奴」
さっきと同じ言葉を繰り返した。
そう言われて辺りを見渡せば、松次郎は道の真ん中に立っていた。人の流れは松次郎を避け割れるが、確かに邪魔この上ない。
「あ、すみません、すみません」
松次郎は急いで隅っこの方に移動した。ふうと一息つくと、また掏られた金のことを思い出しため息が出る。
「ため息を 壁にかけても 仕方なし」
「うおっ」
すぐ後ろにさっきの男が立っていた。
(何なんだ、この五七五男っ!!)
「悩みなら 聞いてあげるよ この俺が」
と己を指さす五七五男。悩みを聞いてくれるというのなら、言おう。ちょっと勇気が要るけれど。
「あの……普通には話せませんかっ!?」
今一番の困りごとは、五七五で話す、わけのわからないこの男だ。
じーっと松次郎を見る五七五男は無表情でしばらく。
「……わかった」
という返事はどこか不満げだ。
「で、お前の悩み事はなんだ?」
聞かれてちょっと考える。奉公人が店の金を掏られたなんて、言いふらしていいことじゃない。
(でもなぁ)
五七五男の言うように一人で悩んでいても答えは出ない。それにこんなに奇妙な男を松次郎は心のどこかで信用してしまっていた、ので話した。まあ、一応奉公先の名は伏せておいたが。
「大金持っていることをわかってるんだから、用心すればいいのに……松次郎は間抜けだなぁ」
とことん呑気な声で言うと五七五男は歩きはじめる。
(何だ、結局なにも助けてくれないのか)
しゅんとしていると、
「何をしている、行くぞ」
と先を行く五七五男に声をかけられる。
「行くって、どこに……」
「掏りのとこ」
「はっ!?」
「実はちょっと奴らの溜まり場に心当たりがある……かも」
(かも!?)
「ど、どうして俺のためにここまでっ」
自分に力を貸してくれるというのは嬉しい。嬉しいけれど、おかしい。疑ってしまうほどの優しさの奥には何があるというのだろう。
五七五男はふっと笑った。綺麗な笑みだ。
(ま、まさかっ! 生き別れた兄だぜ的なっ……いや、顔似てねぇけど)
五七五男は一言。
「三割だったか?」
…………。五七五男は歩いていく。
(いやいや、掏られたのであって落としたわけじゃねぇし。そもそもそれ今の時代じゃねぇし)
まあ何かしらの見返りを要求された方が、まだ信じられる。
「ちょっと待ってくださいよー」
さっきまでより幾分か晴れ晴れした気分で、松次郎は五七五男の後を追った。
町をちょっと離れた森の中にみすぼらしい小屋がある。そこにたむろするのは極悪ではないけれど良い人でもない、ちょい悪い連中。
「わーはっは!」
鶴松は一気に酒を呷り、酒臭い息を吐いた。手に持った一両小判で床をこんこんと叩く。
「俺ぁ今日ついてるぜぇ、見てみろ、とろそうなガキから掏ったらなんと! 見ろ見ろ見ろぉ!! がははははっ」
小屋の他の連中が迷惑そうに顔をしかめ、文句の声をあげる。
「鶴ぅ、うるせぇぞ。酒臭ぇし」
「大金入ったなら、酒でも女でもおごりやがれぇ」
「ったくテメェばっかり、何なんだよ……あんま調子乗ってっと痛いめ見んぜぇ」
鶴松は己に向けられる罵倒さえ心地良いようで、貧乏徳利に口をつける。
「はははっ、勝手に言ってやがれ」
ガラガラガラ
建て付けの悪い引き戸が開いた。
「あん?」
男たちの視線が一斉にそちらに向く。
「誰だ、テメェ」
低い声で問う。髪はぼざぼざ着物もぐずぐず、なのに顔に浮かべた笑みには品がある。変な男だ。
「お前らか 一両小判 掏った奴」
言いながらずかずか中に入ってくる。酔っぱらった男の一人・竹次が、変な男の前に出て、胸倉をつかむ。
「変なこと言いやがってぇ、えっ?」
ふわっと竹次の体が浮き――したたかに床に打ちつけられた。
「竹っ!?」
竹次は動かない。すっかり伸びてしまっている。変な男を見ると手に持っているのは変哲のない扇子だった。
「次は誰 痛い目遭いたい 変わり者」
笑みを浮かべたまま、変な男は小屋の中を見回す。男たちはさっと視線を逸らし、もちろん鶴松もぱっと小判を隠し下を向いた。何やらよくわからないが、この変な男、相当強い。関わらない方がいい。
「どいつだい 一両小判 掏った奴」
誰も答えない。しーんと数瞬時が流れ、
「言わぬなら 全員もれなく ぼっこぼこ」
と変な男が言った……途端、
「こいつだ、こいつっ!! 鶴松が掏ったんだ」
と一斉に鶴松を指さす。
「あ、こらテメェら!」
文句を言った頃には、変な五七五男が目の前にきていた。
「掏った金 素直に返すが 良いだろう」
五七五男から目を逸らし、言い逃れてみる。
「お、俺ぁそんなもん知らねぇよ」
五七五男はしゃがみ込み、鶴松と目の高さを合わせた。飄々とした笑みの中に凛と清い光がある。若干笑みが濃くなる。
「ぼっこぼこ ばっきばきばき 血まみれ……字足らず」
少し残念そうな顔になった。
「ひっ」
ざあっと血の気が引いたが腹を括る。こんなことに屈していたらちょい悪じゃねぇっ!!
「テメェ、普通の話し方しやがれ!」
言いながら懐の匕首に手をかける、と――それより早く五七五男が笑顔で扇子を鼻の先に突きつけていた。
「ひ、あ」
「残念だなあ、今日だけで二回も言われた、それ……さて、鶴松さんや」
「あの、ちょ」
「金を返してもらおうかな」
「う、すいやせんしたぁっ!!!」
一両は惜しいが命はもっと惜しい、体が勝手に動き小判を差し出していた。
「素直なことはいいことだな、うん」
満足そうに頷くと、五七五男は小判を懐にしまった。
「あぶく銭 身に付かぬのが 道理なり」
懐手し、悠々と小屋を出ていく。鶴松を含め、小屋の中の連中は呆然と彼を見送ることしかできなかった。
嵐のような男だった。
「ほら、松次郎」
一人でごろつきの溜まり場に入っていった五七五男はあっという間に帰ってきた。その手には一両。
「わ、ああ、ありがとうございます」
まさか掏られた金が返ってくるとは思わなかった。
「さて、さっさと両替屋いくぞ。三割、三割♪」
五七五男の足取りは軽い。
「え、ちょ、本気ですか」
「当たり前だ、ろう?」
五七五男は足を止め、鼻をくんくんさせている。
「この甘じょっぱい香りは、まさか」
「ああ、もしかしてこれのことですか?」
松次郎は油紙の包みを取り出し開いた。中にはみたらし団子が入っている。十五本。番頭さんに頼まれたものだ。掏りに遭ったのですっかり忘れていた。
「おおっ!!!」
五七五男の目が輝く。
「どれ、少しもらおうか。五本ほど」
「え、五本て多くないですか」
と言う間には両手で団子を五本持っている。
(器用だな)
と妙なところに関心してしまう。
「じゃあそろそろ行くかな、団子ありがとう」
団子をもぐもぐしながら五七五男は踵を返す。団子を持った手をひらひら振り歩いていってしまう。
「あれ、三割は!?」
流石にこの恩に対してお返しが団子五本というのは駄目だろう。両替した三割を渡すことはできないが、主人の徳兵衛に話してきちんとお礼してもらった方がいい気がする。
「いいよ、両替屋まで行くのは面倒くさいから」
「いや、でも」
こんなやり取りを繰り返している内に人通りの多い道にきてしまい、人波にもまれ五七五男を見失ってしまった。
最後まで掴みどころのない人だった。何を思って行動してくれたのかよくわから名が、五七五男が松次郎のこれからを救ってくれたのは確かなこと。
「ありがとうございました」
松次郎は五七五男が消えていった方をじっと見つめてから、頭を下げた。
「おらぁ、兄ちゃん、邪魔だぜ」
「あ、すみません」
怒られて急いで道をあける。さあ、早く両替屋に行かねば。松次郎は歩きだす。
「五七五 団子五本で 一件落着……字余りだ、結構難しいな」
松次郎はくすっと笑った。
人々の間に語られる、都合の良すぎる話――団子五本で願いを叶えてくれる人がいるらしい――なんでも、その男、変わった話し方をするとか。
そんな話が流れたせいで、町々の稲荷社に団子を供える人が後を絶たなかったそうな。
噂される当の本人は今日もどこかの空も下(もと)、扇子片手にみたらし団子を食べている。
《終》
■■■本文終了■■■
読了後の文句は聞かねぇぜ、ベイベー! ……はい、わかってます、いろいろおかしい。
寺音さんのお話に無いところは妄想で補いました^^←もう二次創作と違う。
みたらし団子の数とかもう、自分が五本くらい一気に食べたいなって思ったからですし←もう二次創作と違う。
最初、松次郎の名前が馳太朗だったとか←もうただただ痛々しい。
ブログだと相当読みにくいですね……出来たら本家にupし直したいと思います;;
自分の話は書けないのに、このお話はサクサク書けました。
とても楽しく書けました!
また機会があれば、どなたかの作品を書かせていただきたいな、と思う今日この頃です。
ここまで読んでいただきありがとうございました。